2019年10月31日木曜日

ウルル(エアーズロック)の登攀禁止

最近立て続けに2件少数民族と文明の衝突のニュースを目にしました。それだけ、権利意識が高くなっていることのあらわれなのかもしれません。

一つは、オーストラリアのウルル(英名エアーズロック)の登山禁止です。巨大な一枚岩であるウルルは、土着の民族アボリジニにとって、神聖な山でした。しかし、そこは岩登りの人気の場所でもありました。最近ようやく、関係者の合意がえられ、岩登りが禁止になったということです。岩登りの愛好者は残念でしょうが、今までの、アボリジニの人たちの迫害の歴史を思うと、これはよいニュースだと思いました。

もう一つは、ハワイにある、標高4205mのマウナケア山です。マウナケア山はハワイの先住民たちにとっては雪の女神ポリアフをはじめ数々の神が棲む聖地とされる場所でもあります。
しかし、マウナケア山は、その山頂部の空気が澄んでおり天候も安定していることから、日本の「すばる望遠鏡」をはじめ、多数の望遠鏡が活躍しています。そして、今、すばるの次世代望遠鏡TMTの建設が、5か国の協力のもと、2021年の運用開始を目指して建設が始まろうとしています。

これに対して、ハワイ先住民は、これ以上の建設で、山が穢されるのに我慢ができず、反対運動を強めています。宇宙天文学が、人類にとって重要な学問だと思う私は、よそ事ながら判断に苦しみます。昔宗教に抑圧されたガリレオの代わりに、今度は宗教が譲ってほしい、そんな気持ちも頭をよぎります。
多様性を大切に、少数民族を大切に、言葉でいうのは、簡単ですが、現実はそう簡単ではないと思い知りました。




2019年10月30日水曜日

名前のローマ字表記

日本人が、名前を、ローマ字表記する場合、英語と同じく、名-姓 の順にかくのが普通です。しかし、政府は、来年1月1日より、公文書は、姓ー名 の順にするといいます。公文書だけだから誰も文句を言いませんが、混乱は起きないのでしょうか。他の民間文書は、それに従う人や従わない人が出るのではないでしょうか。又、外国人にとって、どちらが姓なのか、名なのか、判別するのに、混乱が生まれないでしょうか。またネットで検索する場合、ヒットしなくなるおそれもあります。なにらや、安倍政権らしい、ナショナリズムが先行した乱暴な話に見えます。

話は別ですが、私はかねがね、中国の固有名詞の、日本語読みの方式である、音読み方式をやめて、正しい読み方に改め、相手国に敬意を払うべきだと思います。例えば、習近平を「しゅうきんぺい」と読みますが、英語では、おそらく中国の音声に合わせ、Xi Jinpin としています。日本人は、こうした正しい読み方を知りませんから、例えば、英文で、Hangzhou city と出ていても、それが何市なのか、わかりません。杭州市です。そのくせ、香港や「南京」は、ちゃんと「ほんこん」「なんきん」です。一貫性がなく、英文を読む場合、とても不便です。そのくせ、韓国や朝鮮の場合は、音読み方式でなく、正しい読みです、例えば、文在寅 は「ムン ジェイン」とよみ、「ぶんざいとら」なんて読みません。香港の林鄭月娥長官を、アナウンサーが「りんていげつが」と読むたびに、変な感じがします。英語では、Carrie Lam (キャリーラム)さん、字も美しいが、発音も美しい。やってきたことは、美しくありませんでしたが。

2019年10月29日火曜日

疲弊する地方

私も含めて、都会に住む人は、過疎の問題をどれほどの想像力をもって、考えているでしょう。地方の人口が減って困ったことだ、都市への一極集中を何とかせねば、等と考えていないでしょうか。

過疎とは、毎年、住み慣れた故郷を離れる(主に)若者が沢山いるということです。なぜ離れるのか、そこで生活することに希望がもてないからです。つまり、親の後を継いで、地方に残ることに、経済的にも将来的にも、見通しが立たず、やむなく離れる、後には後継者のいない年老いた親が残る、それが現状ではないでしょうか。つまり、過疎の陰には、地方の日常的不幸が存在します。過疎は現象にすぎず、この日常的不幸こそ問題ではないでしょうか。

なぜこんなことを考えたかというと、11月7日告示の高知県知事選挙の、野党共闘の候補者松本けんじ氏の選挙スローガン、「ここで一緒に生きよう」を目にしたからです。素敵なスローガンだと思います。

2019年10月28日月曜日

中国と市場経済

通常、市場経済が発達すると、強権力よりカネの力が増大するので、権力は弱まり、その分企業が強くなります。おかげで、民主化が進みます。例えば韓国も、かつては、独裁政権でしたし、台湾も同じです、しかし、市場経済と共に、市民運動もあり、民主化されました。だから、中国もいずれそうなるだろうと、世界は期待していました。でもそうはなっていない。それはなぜでしょう。ここには、中国という謎の国の秘密がありそうです。

私の仮説です。今、習近平は、いまだかつてない、強大な権力を手中にしています。しかし、少し前、激しい反腐敗運動がありました。あの反腐敗とは一体何だったのでしょう、通常、腐敗にかこつけた権力闘争であり、それで、政敵を次々追いやったのだと、ととらえられています。しかし、次のように、考えられないでしょうか。あの腐敗運動こそ、共産権力と、資本主義の金力との、壮絶な闘いであった。そして、共産権力は、資本主義の金力を屈服されることに成功した、と。

現在、ファーウェイという企業は、アメリカの目の敵にされていますが、それは、ファーウェイが単なる一企業ではなく中国の次世代高速デジタル技術の世界支配の、エージェントだからです。つまり、この世界最大企業は、実は、中国そのものなのです。

2019年10月27日日曜日

米中対決の新局面

アメリカのペンス副大統領が、対中国政策を根本から見直すという内容の演説をしたそうです。それによると、中国は、経済が発展すればいずれ、欧米と同じ自由で開かれた社会になるだろうと期待していた、だから、今までは、少々のことは大目に見てきた、しかし、中国は、経済発展した今も、対外的には覇権的、対内的には強権的な体質が改まらないどころか、ますますひどい、少しも改善しない。もう、これからは、アメリカは、過去の宥和的姿勢と決別して、「戦略的・経済的な競争相手」として、手加減しないであろう、私の脚色が入っていますが、そんな内容のようです。

もし、このペンス宣言が、フルに実行されると、世界の経済には不安要因が広がり、又、両大国の間で、日本など多くの国は右往左往する事態が起きるなど、重大な世界的影響が生まれる可能性があります。つまり、世界は、新たな局面に大きくシフトする可能性があります。

ところで、中国は、鄧小平氏らの改革開放路線により、「社会主義的市場経済」を導入するとして、今日の繁栄を築いてきました。まわりは、中国はいずれ資本主義になるだろう、とたかをくくっていた、それが外れたということです。

それは、中国の側からみると、資本主義に堕落することなく、社会主義を貫くことに成功した、ということになります。では、中国は市場経済という劇薬を飲みながら、どうして欧米と同じ資本主義にならずにいられたのでしょう。(続く)

2019年10月26日土曜日

シベリア抑留者の遺骨収集

終戦後のどさくさ時代を憶えている世代なら、「異国の丘」とか「モンテンルパの夜はふけて」等の歌謡曲を憶えているでしょう。のど自慢とか、ラジオの歌番組で定番の曲でした。前者は、ロシア(旧ソ連)での抑留者、後者はフィリッピンのB級戦犯の捕虜、をうたった歌です。当時やっと戦争が終わり、平和が戻っても、いつまで待っても、帰ってこない夫や息子を思う気持ちがうたわれています。

日本人なら、今なお、外国の地にねむっている多くの兵士の遺骨を、帰還させたいと思うことは、当然のように思います。しかし、不思議なことに、政府は、その遺骨返還という国家事業にあまり熱心にはみえません。

シベリアの地で、戦後抑留された日本人のうち、推定5万5千人が死亡し、うち遺骨回収できたのは、まだ2万1千9百人にすぎません。しかも、このうち597人分が、日本人の骨でないことが判明しました。それだけならあり得ることでしょうが、驚くべきことは、こうした取り違えの可能性は、2005年ころから、DNA専門家らから、再三指摘されていながら、それを改善も公表もしないで14年間放置していたといいます。フィリッピンの遺骨収集でも類似のことが起きています。

赤紙一枚で、戦地に送られた兵士の命の値段は、当時のはがき代1銭5厘と、庶民は陰で自嘲しました。そのような粗末な扱いを受けた兵士たちは、遺骨になった今も、粗末な扱いを受けているといえます。戦争を反省しない人たちは、遺骨収集の不熱心さに反比例して、靖国神社に行くのだけは熱心です。一体そこで、何を祈っているのでしょう。


2019年10月25日金曜日

関西電力問題再び

関西電力の問題で揺れている福井県高浜市は、人口約1万人の小さい町だそうです。この小さい町に、国から、電源三法交付金として、1974年から2017年の43年間で、なんと459億円ものお金が支給されました。

これは、1年あたり、約10億円で人口一人当たり10万円、ということは、ひとりあた43年で430億円、到底信じがたい金額です。つまり、森山助役や関電の幹部も悪いが、電源三法という法律は、何が何でも原発を作ろうとする、「札束の暴力」ではないかと、思ってしまします。こうした多額の不健全な金が、それに群がる既得権益集団をつくり、原発村の一角を形成するではないでしょうか。

原発は危険だから、どの県、町も引き受けない、だから、とても貧乏なところに、多額のお金で引き受けさせる、それが、「国策」の中身です。原発の場所はどこも、何の産業もない、貧しい場所です。原発があれば助かるだろう、というわけです。これは、一見合理的に見えます。

裏を返せば、どこも引き受け手がない、ほど危険性があるのであり、そうした危険を軽視して、ごり押しする所に、札束の暴力が生まれるのではないでしょうか。原発は危険だという国民や専門家の声をきくべきです。

2019年10月24日木曜日

教師の多忙化

昔ほど教師は、時間的余裕があったように思います。私の高校時代、3年間担任だったT先生は、化学の教師でしたが、昼休み理科室に行くと、いつもきまって物理のH先生と将棋をしていました。隣町から汽車で通勤していたT先生は、5時過ぎると、自転車を飛ばして駅に向かう姿をたびたび目にしました。残業もなければ、昼の会議や生徒指導もない、のどかな時代でした。

私が教師として神奈川県に来た頃、35年前、教師には研修日があり、週一回は、午後有給で、自由な研修が認められており、予め、研修が可能なように、時間割が組まれております。おかげで、秋葉原に行って電気パーツを探したり、家で実験装置を試作したり、図書館でしらべものができました。

その後、国鉄の民営化に伴い、国鉄職員や組合に対する激しいバッシングが起き、やがて、公務員バッシングとなり、そういった教師の研修に、世間は次第に不寛容になり、研修の権利ははく奪されました。そして、次には夏休みも、これは、本来休みではない、という「正論」が言い出され、様々な仕事が入り、勤務日とそうでない研修日を明確にされ、研修日は、休みと言えども、研修日だから、研修報告を提出することが義務付けられました。

そして、今度は安倍政権の働き方改革で、「変形労働時間」が導入されようとしています。それは夏休みがあるのだから、繁忙期には、最大10時間までは働き、全部の平均が8時間になればいいだろう、というものです。つまり、お前たちには夏休みをやるから、代わりに普段はその分、沢山働けということです。これは、現在の多忙状態、残業代ゼロ状態を追認正当化するに他ならず、何の問題も解決されていません。

私は、振り返ってみて、勉強する時間があったからこそ、教師として何とか成長できたと思っています。その時間がなくなったら、考えるだけでも恐ろしい。

2019年10月23日水曜日

東京の魅力とは

築地魚市場が、豊洲に移転して、丁度1年になるそうです。豊洲はうまくいっているのでしょうか。色々な理由があるのでしょうが、取り扱いは激減して、事業計画の6割弱に過ぎないといいます。その分、足立市場とか川崎北部市場とか、南部市場などが増えている、といいます。

移転の議論の際、築地は狭すぎる、衛生管理が不十分、等の問題が指摘され、それらを解決するための移転だったと思います。移転が成功だったか、失敗だったかは、もっと長い目でみないとわからないのかもしれません。しかし、一つだけはっきり言えることがあります。江戸の香のする名所が、又一つ消えてしまった、ということです。

東京の魅力とは何でしょう、最先端の文化、最新の建築物、など未来志向の魅力とともに、江戸の歴史的な文化の名残こそ、東京の魅力です。そうした歴史遺産の貴重さは、東京に限りません。どこでも、そうしたものを観光の目玉にして、大切にしています。築地の魅力は、そうした江戸文化の魅力だったのではないでしょうか。

新しい港町ヨコハマには、文明開化以来の歴史の魅力があります。それも又、横浜の最大の魅力です。そこに、IRカジノというアメリカ文化が入り込めば、横浜の魅力はぶち壊しになるのではないでしょうか。それは横浜の観光資源の破壊につながります。

お知らせ:よろしければ、私の別のウェブサイト⇒生物と情報 をご覧ください。

2019年10月22日火曜日

科学と中国の戦略

まず、次世代加速器の大きさがすごい。現在の最大の加速器、つまりスイスにあるLHCは、ヨーロッパの共同事業です。円形型の加速器で、その大きさは、丁度山手線くらい全周27㎞といいます。これに対して、次世代加速器は全周100㎞と、4倍の大きさです。これは、ピラミッドより巨大な、万里の長城をのぞけば地球最大の建造物となるでしょう(地下なので、見えませんが)

現在のLHCもそうですが、世界中からの科学者技術者の総力を挙げての事業になります。幸い、加速器は戦争兵器には、直接的関係がないので、国際協力が可能なのでしょう。間違いなく、中国は最先端の高エネルギー物理学の世界の中心になります。習近平氏が唱えた一帯一路構想が、世界覇権の経済的象徴なら、次世代加速器は、科学における世界覇権の象徴となるでしょう。

しかし、ここにひとつ問題があります。こうした巨大で複雑な事業が成功するためには、自由でオープンな発言や、徹底した透明性を必要としますし、科学者たちは、そこにおいて、妥協しないでしょう。つまり、巨大加速器は、同時に「自由と民主主義という文化」なしには、生まれえないことは、おそらく確かだと私は思います。このリトマステストに、中国は、パスできるかどうか、今まで、カネと権力の力で、我を通し、そこそこに成功してきた中国ですが、真理探究の世界で、それが通用するかどうかが試されるでしょう。

2019年10月21日月曜日

巨大加速器

素粒子同士を高速で衝突させる装置である加速器は、物質の極限だけでなく、宇宙の始まりについても、解明できるといいます。そのためには、粒子速度は、ほとんど光速に近くする必要があります。装置が大きいほど有利です。

そのようなわけで、現在、スイスにあるLHCと呼ばれる加速器が、世界最大の加速器で、今まで理論的仮想粒子にすぎなかったヒッグス粒子の発見に成功してきました。これにより、現代物理学を支える標準理論も又、正しいことが確証されました。それは、輝かしい成果です。しかしながら、現在、宇宙物理学の側から、現代素粒子物理学に対して、標準理論を、根底からおびやかす重大な問題が投げかけられています。それは、宇宙には、私たちが知っているつもりの物質とは全く異なる物質が満ち満ちているらしいということです、それが一体何なのか、皆目わからないので「ダークマター」と呼ばれています。そして、ダークマターの存在そのものは確からしいのです。

実は、LHCには、このダークマターに関する何らかのヒントの発見が期待されていたのですが、結局それは見つからないようです。それで、もっと大きい加速器の必要がでてきました。それが次世代加速器です。それは、莫大なお金(5千億~8千億円)がいりますから、どの国も二の足をふんでいます。日本でも、岩手県と宮城県の県境に、計画がありますが、なかなか進行しません。

そこに、今、一番お金がある国、中国が名乗りをあげました。そして、この問題は単なる科学の話に終わらないのです(続く)

2019年10月20日日曜日

海上自衛隊の中東派兵

中東が不安定になり、石油の輸送路の安全が保たれないとして、アメリカは同盟国に、有志連合による、オマーン沖などへの派兵を呼びかけました。今のところ、呼びかけに答えたのは、イギリス、オーストラリア、バーレーン、サウジ、UAE等5か国だけです。

そんな中、日本は、海上自衛隊の、オマーン沖など中東派兵の検討を始めたといいます。紛争に巻き込まれたらどうするのか、等憲法上の問題もありますが、私は、それ以外に、この派兵の政治的重要性について述べたいと思います。

実は、安倍総理には、2012年以来、存在感を大きくしつつある中国に対抗するため、また石油運送ルートとして重要な海上交通つまりシーレーンを守るため、アメリカに頼るだけでなく、オーストラリアやインドなどと一緒になって、独自の中規模の軍事的覇権を作りたいとの考えがあります(自由で開かれたインドー太平洋作戦)。それは、軍事予算に悩むアメリカも大歓迎して、アメリカと一体の政策になっています。

今回は、アメリカからの要請に何らかの態度を示さざるを得ない中で、その絶好のチャンスと言えます。また、そうした行為は、安部氏の「積極平和主義」の宣伝にもなり、憲法改正論議にも有利に作用するとの計算もあるでしょう。こうしたことを許せば、日本の軍国化は一気にすすみ、憲法改正、軍事増強、しまいには、核装備と際限なくすすんでゆくでしょう。それは、アジアの緊張を増すだけで、平和とは逆の方向を進むことでしょう。

2019年10月19日土曜日

ディベイトのある選挙

アメリカの大統領選挙を見て、うらやましいと思うことがあります。それは、ディベイト(討論)です。
例えば、今、民主党内では、候補者選びをやっていますが、10人くらいの候補者が立候補しています。そして、全候補者が一堂に会して、お互い討論をします、それも、公開でです。しかも、一度きりでなく、半年くらいかけて、何度もします。そうした中で、議論は煮詰まるだろうし、候補者の考えもわかるし、今世の中で何が重要かもわかるでしょう。選びながら、政策の学習もできます。候補者も議論の過程で、自分の考えを深めることができるでしょう。真剣なディベイトは、あ互い相手の弱点を指摘することで、議論は深まります。

翻って、日本の選挙は一方的に演説するだけです。ある人の演説を聞けば、なるほどと思い、別の人のをきいてもなるほどと思い、比較することができません。それは、ディベイトがないからです。そして、選挙民の多くは、自分の支持する人の演説をきくが、支持しない政治家や政党の話は聞きたがりません。ディベイトが乏しいことが、選挙を面白くなくしています。
昔は、立会演説会があり、全候補者の話が聞くことができました。選挙の方法をもう少し工夫すべきではないでしょうか。

2019年10月18日金曜日

犯罪者の家族

今から約20年前に起きた、いわゆる「毒入りカレー事件」の息子が、「毒婦」副題「もう逃げない」という本が出版されたらしく、その紹介記事を新聞で読みました。私が関心を持ったのは、犯罪者の家族が、犯罪者同様に、社会から指弾され、悲惨な生活を強いられ、家族の人権が失われている、という問題です。

本人、田中ひかるさん(偽名)は、事件後、孤児院で暮らし、いじめを受け、今の頭に多数の傷があるといいます。社会にでてからは、ひたすら名前を隠し生きざるを得ませんでした。ある女性と恋仲になり、相手に素性を明かし、親にあったら、死刑囚に嫁にやれない、と言われたといいます。

こうした犯罪者の家族を救う組織は、仙台に一つNPOがあるくらいで、ほとんどなく、そうした人の情報も非常に少ないといいます。

私は、是枝監督の「万引き家族」の感想の所で、家族という紐帯から、個人の自立を述べましたが、ここでも、それが当てはまります。犯罪者の家族にまで、連帯責任を追及するのは、家族からの個人の自立を認めない社会の現れではないでしょうか。

かつて、人気司会者のみのもんたさんが、息子が破廉恥罪みたいなので、逮捕されたとき、朝の人気番組を降板しました。それは、世間の連帯責任論に屈服したのと同じです。あのとき、テレビ朝日や、みのさんは、そうした社会的影響を考え、逆に、個人の自立や権利を堂々と主張して、番組を降板せず、逆に問題提起をして、なおかつ社会に受け入れてもらったなら、日本中の、犯罪者の家族は、助かったかもしれません。また、あらわれるかもしれない、有名人の家族の犯罪、その時は、是非そうしてほしい。

2019年10月17日木曜日

台風19号再び

今回の台風被害について、メディアは、様々な分析をしています。それは、今後のため重要な作業で、それなりに、なるほどと教えられることも沢山ありました。しかし、一番重要なことが欠けているのではないかとおもいます。

地図の上では日本列島は、二次元世界ですが、実際は、馬の背のように、急峻な山岳地帯とわずかな海岸線にそった平地からなるといいます。この地形により、雨は、急流となって中央から、周辺海域に流れます。長い川ほど、流域が大きいだけ、増水も激しく、速度も増大し、侵食もはげしくなります。

そこへ従来の想定を超えた雨量がやってくれば、堤防が持たないことは、専門家でなくても明らかです。大きい川程危険になります。今回、荒川や相模川などが、大丈夫だったのは、不幸中の幸いです。

長大な川の全流域にわたって堤防をかさ上げすることは、とても困難でしょう。また今回のような大量の泥の運搬により、川底はいっそう浅くなり、危険度は増します。つまり、基本的に打つ手はないのではないでしょうか。

今迄、人間は自然を支配したと思ってきました。しかし、今、地球温暖化という形で、自然の力の前に、人間の無力を思い知らされています。私たちは今、お尻に火がついたように、大変だと思うべきです。スェーデンの少女の叫びは、誇張でもなんでもありません。

2019年10月16日水曜日

インターネット50年

この10月で、インターネットが始まって、丁度半世紀50年だそうです。インターネットが世界や日常生活にもたらした恩恵は、甚大なものでしょう。GAFAに見られるように、経済を一変させました。又、高速デジタル通信技術5Gはササイアティ5.0などの技術革新の中心技術でもあります。これからも、どんどん発展しようとしています。

一方、サイバー戦争や、ネットハッキング等、またフェイクニュースやSNSでの中傷、デマなど暗い側面も沢山あります。

しかし、インターネットは、善か悪かなどと、問題を設定するのは間違いでしょう。技術に善悪はなく、それを利用する人間にかかっているからです。例えば飛行機や船だって、戦争の手段として、多くの悲惨をもたらします。

これから、AIや遺伝子工学など、更に科学技術が発展すると、それらがもたらす善に匹敵する悪が生まれる可能性があります。人間は、自分自身が発展することをしないで、技術だけ発展するなら、その技術を使いこなすことができない、又はその資格がない、そんな日が遠からずやってくるのでしょうか。

人間の発展と豊かさの代償である地球温暖化は、そうしたことへの警鐘かもしれません。

2019年10月15日火曜日

天皇代替わり儀式

10月22日の天皇代替わり儀式、即位礼正殿の儀に、共産党が、国民主権の憲法に反するから参加しないと、声明をだしたといいます。しかし、それに呼応して、そうだそうだという声が聞こえてきません。私の勝手な想像ですが、こんなことでしょうか。「そんなことはわかっている、分かったうえで、儀式として、やっている、お祭りなのだから、こまかいことに目くじらたて、せっかくの祝賀気分をこわすな」。私も、通常ならそう思うかもしれません。しかし、安倍政権の現在は、そう思いません。

安倍政権は、安全保障の面で、憲法をないがしろにしてきましたが、天皇に関しても、憲法をないがしろにしています。例えば、「令和の新時代にふさわしい憲法を」と繰り返しのべ、憲法改正のため、代替わりを最大限に政治利用しています。平和憲法を大切に思っているらしい天皇は、苦々しい気持ちでしょう。
また、国民の対多数が、現在の天皇の長女を天皇にするのが自然であり、当然と思っているのに、皇室典範を盾に、又は一部の人達を代弁して、「男系の伝統」にいつまでも、こだわり、逆に天皇制存続を窮地においやっています。これまた、男女同権の憲法に違反します。これまた、直接の当事者である、新天皇は苦々しく思っているでしょう。

正殿の儀は、明治時代に天皇を神格化しようとして、定めた登極令によるもので、新天皇が、高い台座みたいな高御座(たかみくら)に座り、その地位は神から与えられたと宣言し、その下で、三権の長が並んで、バンザイをするといいます。これでは、明治時代と同じです。それを捨てたところに戦後は始まったのではないでしょうか。今までさんざん政治利用されてきた天皇は、はたして、どう思っているでしょう。

2019年10月14日月曜日

ノーベル賞の報道

国民が、科学の知識を学ぶことは、とても重要なことです。ことに、最近の科学は、日進月歩です。原発や地球温暖化のことを知る意味でも、科学の知識は民主主義の基礎ともいえます。

その意味で、ノーベル賞は、最新の研究を知る最良のチャンスのはずです。未来の科学者である小学生も、目を輝かしてそのニュースを見るでしょう。しかし、その意味で、NHKのテレビ報道は嘆かわしいものでした。日本人が受賞したかどうかだけが、最重要視され、内容そっちのけです。

例えば、ノーベル物理学賞は、系外惑星と、初期宇宙の研究に贈られましたが、どちらも、最重要で、とても面白い話なのに、私の知る限り、何の解説もなされません。そして、化学賞の吉野さんのリチウム電池は、嫌というほど、報道されました。

一方、国民の科学への関心は芳しくありません。例えば、かつては、科学雑誌と呼ばれるものは、以前は、科学朝日、自然、等素晴らしいものがありましたが、どれも経営難のため、消えてしまいました。現在青少年向けに「ニュートン」が健闘していますが、ここも経営難で、いつ消えるかわかりません。

国民の中には、科学は、特別の一部の人のもので、庶民には手の届かない、高尚な難しいものという、誤った固定観念がまだ根強くのこっているのではないでしょうか。
追伸)あるいは、国民にとって、科学はそんなものだという大衆蔑視が、NHK報道者にはあるのでしょうか。

2019年10月13日日曜日

台風19号一過

台風19号で、昨日は、スーパーも休み、交通もストップ、いつも行く図書館も休館、やむなく一日籠城。一日の長いこと!おかげで、一か月ほど前から、ちびちび読んでいたあまり面白くない長編を、やっと読了。ほこりをかぶっていた健康器具のバランスステップをしたり、少しずつ運動しようなどと、どうせ3日坊主で終わる決意をしたり。

今回の台風では、身内の住む近所の川、相模川、南相馬の新田川、相馬の宇田川、どれも氾濫、又はその一歩手前。19号の列島的スケールの大きさに驚きです。阿武隈川流域など、まだ被害の全容がわからないところもあり、心配です。

とりあえず、自分の所は、台風直撃にもかかわらず無事でした。今回だけは。久しぶりの思いで外にでたら、遅い遅いと思っていた金木犀の花の香がやっと、かすかにただよってきました。

2019年10月12日土曜日

ポイント還元

ポイント還元が、なかなかすすんでいないようです。私の町のスーパーでも、とんとみません。イオンの岡田元也社長が、ポイント還元を、「無茶苦茶だ」、「暴力と同じだ」と、最大級の表現で批判しているのを聞いて、うかつな私は、はじめて気づきました。

政府にすれば、軽減税率とは違うから、税金は入る、なおかつキャッシュレス化を進めることができる、一石二鳥なのでしょう。しかし、小売業者にすると、消費税の軽減税率ではないから、消費税はちゃんとおさめたうえで、自腹で、消費税を相殺するような値引きを強いられている、ということになります。

日本チェーンストア協会など、小売4団体は、ポイント還元を批判して意見書をだしています。「官製の価格引き下げ競争策自体が大きな問題である」と。確かに、スーパーにすれば、他の店がポイント還元を始めれば、対抗上自分も、損を覚悟でやらざるを得ません。

消費税という弱い者いじめの政策は、小売業という、弱い者いじめを、伴いながら実施されているのです。

追伸)内容に、私の誤認による誤りがあるかもしれません。後日訂正します。(10/24)

2019年10月11日金曜日

宇宙時代到来

愈々宇宙時代が到来しようとしています。アメリカでは、ベンチャー企業が、次々ロケット打ち上げに成功しています。そうしたロケットに、高額な料金を払って、日本の若手の起業家が、宇宙旅行をするといいます。又、日本でも、新たな宇宙ビジネスを狙って、様々な起業家が、事業を始めようとしています。宇宙は、国の事業から、ようやく民間の事業になりつつあるのでしょう。

私たちの活動が、地表という二次元世界から逃れて、宇宙まで広がるとき、私たちは、やっと地球を客観的にみることができるのではないでしょうか。勿論いままでも、人工衛星の写真で、地球を外側から見ることはできています。しかし、これからは、それをより精細に、より頻繁に観察することになるでしょう。

それは、地球という、まれな惑星に住む、自分たちの姿を客観的に考える機会をあたえるでしょう。そして、環境汚染や戦争の愚かしさを、改めに気づかせてくれるのではないでしょうか。つまり、宇宙時代とは、地球再発見の時代であり、その思想的インパクトに私は期待したい。

2019年10月10日木曜日

トランプ弾劾、調査開始

トランプ氏が、またも、ウクライナを巻き込んだ、バイデン親子攻撃の、内部告発で、窮地に追い込まれています。民主党は、ついに大統領弾劾のための調査に踏み切りました。弾劾については、今まで反対が賛成を上回っていたのが、逆転し、弾劾賛成の方が多くなりました。今まで、弾劾には慎重だった民主党のペロシ下院議長も「潮目がかわった」といっています。

弾劾追訴は、民主党が多数である下院できまります。しかし、弾劾裁判は上院が行います。解任の判断は、上院の3分の2以上でなければなりません。上院は、トランプ支持の共和党が多数ですから、3分の2はおろか、過半数も、困難でしょう。しかし、裁判の成り行きによっては、多数の造反がでて、解任も可能性ゼロとはいえません。

日本では、首相不信任案を、割と頻繁に国会で提出されます。アメリカの大統領弾劾は、それとは、比べ物にならない重みがあるようです。それは、議院内閣制と、厳密な3権分立による大統領の違いでしょう。戦後弾劾訴追を受けたのは、わいせつ行為スキャンダルのクリントン大統領だけで、上院で、解任を免れています。ウォーター事件のニクソンは下院が弾劾に向けた調査段階で辞任しました。

弾劾の行方がどうあれ、アメリカの民主主義の最高権威が、弾劾を受けること自体、アメリカの民主主義の危機であり、打撃であることに変わりはありません。

2019年10月9日水曜日

関西電力に思う

今多くの原発が停止したままです。それは、再稼働反対の世論や、3.11の事故以来、厳しくなった、安全基準を満たすため、新たな施設を工事をしているからです。

私は、今まで、これらのことは、住民や市民運動家の運動の成果ととっていました。しかし、今回の関西電力の、原発マネー還流の実体を知り、そうでもないことがわかりました。関電は、痛くもかゆくもありません。しかも、大手やら地元の工事を請け負う業者は、ウハウハです。何故なら、規制が厳しいほど、仕事がどんどん増えるからです。しかも、関電は、いくら工事費が掛かっても、心配ありません。全部経費で賄える位からです。先日「これは経費で落ちません」というドラマがありましたが、全部経費で落ちるのです。それは、「総括原価方式」というマジックがあるからです。

「総括原価方式」とは、すべての費用を「総括原価」とし、さらにその上に一定の報酬を上乗せした金額が電気の販売収入に等しくなるような方法で、電気事業法19条で、規定されています。つまり、どれほど経費がかかろうと、利潤はちゃんと保証されています、ここには、競争原理が働かない、独占の横暴身勝手があります。

追伸 関電だけでなく、11の電力事業者は、再稼働の為の追加工事費として、5兆円を超える事業費を発注しているといいます。この、元を言えば私たちの電気料金からなる「再稼働利権」に、甘い匂いを嗅ぎつけた有象無象のウリバエが集まって、甘い蜜を吸っているのです。

2019年10月8日火曜日

中国の抑圧政治

今、香港で、毎日激しい若者のデモと、警察の弾圧が、続いてます。マスコミも、当初の約束である一国二制度が、危機だとして、暗に中国を非難します。

私は、中国の民主主義の遅れは、歴史的な事情があり、軽々しく批判することは、出来ないと思っていますし、ましてや、日本の侵略も又、中国の民主主義の遅れの一因である、のだから、という自制的気持が常にあります。

しかし、今の香港の状態は、そうしたものを超えています。路上で、大勢の武装警官と対峙する恐怖は、どれほどのものでしょう。よほど、追い詰められない限り、半端な正義感などでは、不可能でしょう。それを、大勢の若者が行っていることに、私は、切実な何かを読み取る必要を感じます。女性リーダーの周さんは、日本の記者にいつも、日本語で語っています。よほど、海外からの支援、支持が欲しいのでしょう。

ウイグル自治区も同様ですが、いかなる理由であろうとも、人間に、これほどの苦痛や抑圧を与えることを正当化する理由にはなりえない、そう思います。

2019年10月7日月曜日

所信表明演説ごまかしだ

安倍首相は、首相所信表明演説で、かつて、第一次世界大戦直後の、パリ講和会議において、日本全権代表の牧野伸顕は「人種平等」を提案した、と述べました。それは、カリフォルニアなどにおける日本人を含んだ多くのアジア系入植者に対する人種差別を反映したものだったのでしょう。

しかし、安部氏が、これに続いて、次のように言うとき、それは、真っ赤な嘘です。
「世界中に欧米の植民地が広がっていた当時、日本の提案は、各国の強い反対にさらされました。しかし、決して怯(ひる)むことはなかった。・・・ 日本が掲げた大いなる理想は、世紀を超えて、今、国際人権規約をはじめ国際社会の基本原則となっています。」

これだと、日本は、世界の植民地化に反対し、パリ講和会議で孤軍奮闘していたかのように見えます。その実、本当は、日本軍国主義者たちは、「大東亜共栄圏」をかかげ、アジア各地を侵略して、日本の植民地にしていたのです。そして、当時も今も、歴史修正主義者達は、日本の植民地主義を決して認めず、欧米の植民地からアジアを解放したのだと、言い張ります。安倍氏の同じ考えだから、こういう風に言えるのでしょう。

歴史の一部だけをつまみ食いして、日本の侵略の歴史を隠蔽する、それがために、いつまでも韓国と和解ができていない、その原因である、悪質な歴史のごまかしを、所信表明演説で述べているのです。



2019年10月6日日曜日

同性婚と憲法24条

憲法24条「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、・・・」が、時代に合わないとの理由から、憲法改正すべきだ、と自民党議員が言っているそうです。何故なら、これでは、「両性の合意のみ」ということで、同性婚は、違憲になるからだといいます。そうでしょうか。

別の有力な解釈もあるようです。それによれば、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し」ということで、両性の合意を無視した、例えば親同士の取り決めなどではなく、本人同士の考えを最重要視することを規定しているのであり、「両性」に力点があるわけではない。だとすると、「両性」の部分は、新たな法律で、修正補足すれば済むことです。

事実、そうした同性婚の法改正案が、提案されてきました。しかし、うるわしい伝統日本を重んずる自民党は、旧来の家族や国家を重視し、同性婚の法改正に反対してきました。それを今更、同性婚を理由に憲法改正とは!

自民党やマスコミは、こんどの国会の最重要な問題は憲法であるかのような、宣伝をしています。しかし、憲法改正論議の前提であるべき、国民の側からの改定要望は皆無です。憲法24条の「問題提起」は、こうした自民党の、苦しい状態を表しているのではないでしょうか。

2019年10月5日土曜日

トリチウム海洋投棄

たまり続けつトリチウム汚染水、どうするのか、方針すら明確でありません。今夏、東電は、汚染水をため続けるのは限界がある、との報告を出しました。そのあと、なぜか、当時の環境大臣が、突然「海洋放出しかないじゃないか」と、暴言をいいました。いかにも、雰囲気作りの策略を感じました。そうしたら、今度は、松井大阪市長が、「海洋放出が科学的に安全なら、投棄場所として大阪湾でも構わない」と発言しました。

私には、これらはどれも、何が何でも海洋投棄に持っていこうとする、意図的な世論操作に思えてなりません。例えば、松井市長の発言は、仮定法みたいな形で、なんとなく、「海洋放出は安全」という印象操作を感じます。放射能が安全なはずがありません。しかも、日本の投棄の安全基準は、世界基準にくらべても甘いものです。

よろしければ、こちらも トリチウム汚染水 

2019年10月4日金曜日

臨時国会始まる

今日10月4日臨時国会が始まりました。12月9日までの67日の会期だそうです。2020年に新憲法施行を目指す安倍政権にとっては、臨時国会は、憲法審議を開始するための、ぎりぎりの最後のチャンスということで、臨時国会では、そうとう強引なことをやってくるのではないか、心配です。

とにかく、なんでもいいから、憲法論議を開始したい自民党は、臨時国会では、「国民投票法」の改正をまず、審議させるだろうといわれています。何故なら、この法律では、マスコミを使った政策宣伝が可能で、金力がある方が有利であるということで、野党からも、改正の要求がでていて、抵抗が少ないからです。これを臨時国会で決着すれば、来年の通常国会で、憲法改正の議論がスムーズにはじめることができます。

来年は、オリンピックの年です。マスコミは、故意にかどうか、朝から晩まで、オリンピック一色になるでしょう。そんな中で、どさくさに紛れて憲法改正をする、それを狙っているとは、思いたくありませんが、絶好のチャンスではあるでしょう。


2019年10月3日木曜日

ドナルド・キーンさんの嘆き

日本文学の研究者、ドナルド・キーンさん、東日本大震災をきっかけに、日本国籍を取得しましたが、ことし2月に96歳で、多くの人に惜しまれながら亡くなりました。
日本人の心の機微や繊細さを、日本人以上に理解し、世界に紹介しました。しかし、晩年は、日本の姿に失望し、危惧を抱きながら、誰にもその気持ちを理解してもらえずに、亡くなったらしいことが、最近わかりました。最期までメールのやり取りをしてきた、タフツ大学のイノウエ教授からの情報です。イノウエ教授は毎年キーンさんの自宅を訪問し、身の回りの出来事から専門的な文学論まで語りあってきました。イノウエ教授によると、キーンさんは、日本人が繊細な心で多様な文化を育み、長い年月をかけて平和を築き上げてきたことを、大事に考えていたといいます。
キーンさんが平和に思いを寄せる背景には、70年あまり前の戦争体験があります。キーンさんは、太平洋戦争で海軍の通訳として日本兵の尋問を担当。沖縄戦では、日本兵に投降を呼びかける役割も担いました。

キーンさんが嘆いていたのは、他者への寛容さが失われているように見える日本人の姿です。特に、月刊誌に氾濫する嫌韓の記事を憂い、さらに、憲法の改正が議論になり始めても、歴史や平和について無関心な日本の状況に失望していました。
そこで、キーンさんは、憲法に対する自分の考えを、新聞に投稿したが、今のところ反応はふたりだけだ、奇跡は起きなかった、と言っていたといいます。
私たちは、大切な大恩人にたいして、うわべだけの賞賛だけで、十分報いることなく、必死の思いで書いた最期のメッセージすらも、聞く耳を持たず、悲しい思いで死なせた、美しくもなく、繊細でもない、醜い日本人となってしまいました。

2019年10月2日水曜日

清潔という病

自然保護活動家のC・W・ニコル氏は、自然を愛し、日本を愛し、帰化して、南アルプスの黒姫山に、山小屋をつくり、環境保護を実践しるようです。活動家ですから、多分多くの人と接すること機会が多いのだと思います。そのニコル氏が、日本人、特に若者が、自然に無知であることを嘆いていました。木の名前を知らない、鯨とイルカの区別ができない、等。年々それがひどくなっているといいます。

私も、日常の経験や、もと教師で生徒と接する中で、同様の感想を持っております。よその国のことはよく知りませんが、私の数少ない読書経験でも、英語圏の小説には、沢山の植物名が、当たり前のように登場します。

現代の日本の文化は、ひたすら自然と逆方向に向かっているように思います。土を汚く思い、昆虫類を見れば害虫と思う。ひたすら清潔が善であると信じています。しかし、清潔の為に、いかに中性洗剤が使われ、昆虫が殺戮され、プラスチックが多用されていることか。

「清潔」という概念はどこまで行っても、きりがありません。最終的には、自分以外の物体や他人はすべて不潔で、消毒すべき対象になりえます。過度な清潔は、文化でも文明でもありません。ただ商業主義に毒された不潔恐怖症にすぎません。





2019年10月1日火曜日

サモアとは?

ラグビーの次の相手国ということで、サモアを調べたら意外なことがわかりました。サモアは二つあります。昔は西サモア、東サモアをよんでいたそうですが、今は、サモア独立国、アメリカ領サモアと言います。ラグビーの相手は、もちろんサモア独立国です。

要するにサモアは、朝鮮半島やドイツと同じ分断国家なのです。そして、アメリカ領サモアは、今も、アメリカの準州ということで、自治がありません。返還前の沖縄に似ています。勿論ラグビーに参加もできません。

世界には、こうした半植民地状態がまだ沢山残っているようです。そうした地域は、「非自治地域」と呼ばれ、本来、独立するべきところです。非自治地域は、英国所属が10か所(ケイマン諸島等)、アメリカ所属が、3か所(サモア、グアム等)、フランスが2か所です。国連もこうした非自治地域は、人権の観点から、重要視しているようで、独立の後押しをしています。70回の国連総会で、グアムの議会議長が訴えました、「グアムの脱植民化の最大の脅威は、グアムの軍事化だ」と。

私たちが、普天間基地撤去を叫ぶとき、移転先の候補によくグアム島が出てきますが、そのとき、私たちは、独立を望むグアムの人たちを、忘れるべきではないでしょう。

サモア独立国の人口は、およそ18万、そんな小さな国でありながら、ラグビーでは、大国と対等に渡り合う、そのようなスポーツの素晴らしさを生かす意味でも、報道は、もっとその国を紹介したりして、世界の国々にリズペクトを払う努力をすべきではないでしょうか。